早いもので今年も残り2ヵ月となりました。12月にはクリスマスが控え、私も子供たちにサンタさんに何を欲しいか聞く季節となりました。ちなみに税務的な視点でいえば、この親から子(個人から個人)へのプレゼントも原則的に贈与となります。しかし、社会通念上認められるものや、1年間で110万円以内のプレゼントであれば、贈与税はかかりません。
では、同じく年末における会社の行事である忘年会でのビンゴ大会の賞品は、贈与となるのでしょうか?
贈与にかかる取引の種類
各種取引の贈与判定
(1)個人から個人への贈与
受け取った側に贈与税がかかります。
贈った側には、税金はかかりません。
(2)個人から法人への贈与
受け取った側である法人は、時価相当の財産を無償でもらえたことにより、利益(受贈益)が生じ、法人税がかかります。
問題は、贈った側です。受け取った側が法人の場合は、贈った側である個人にも財産を時価で譲渡したとみなされて「みなし譲渡所得税」がかかります。
例えば、土地や建物をイメージしてみてください。
この場合の時価相当の財産とは、路線価ではなく、「時価」であり不動産の譲渡などの「含み益」に課税されます。
したがって、含みのない現金の場合は、税金はかかりません。
※但し、公益法人などへの寄付の場合は、税金はかかりません。
(3)法人から個人への贈与
贈った側の法人は、財産を時価譲渡したものとして取得価格との差額が売却益として法人税が課税されます。
贈与の場合ですと、寄付金として仕訳されるため、資本金の額及び資本準備金の額の合計額等を超える部分の金額は、損金の額に算入できません 。ただし、広告宣伝や接待交際費、福利厚生費とされるべきものは除きます※。
※上記に該当しない場合で、贈与を受け取る側の個人がその法人の従業員や役員である場合は、 賞与 、役員賞与(毎月支給されるような場合は、給与)となります。
受け取った側の個人には、贈与税ではなく、所得税がかかります。従業員や役員の場合は、給与所得、または、一時所得となります。
ビンゴの賞品は上記(3)に該当しそうですね、後述致します。
(4)法人から法人への贈与
贈った側の法人には、財産の時価譲渡としての売却益に対し、受け取った側の法人には、受贈益に対し、それぞれ法人税がかかります。
忘年会での賞品の取扱い
(3)法人から個人への贈与
上記の取扱いが該当します。では課税対象なのか、具体的に詳細をみてみましょう。
基本的に、忘年会におけるレクリエーション行事のビンゴ大会は抽選の結果によって賞品が当たるという機会が与えられるものであって、「ランダム性が強いこと」、「勤務の対価として支給されるものとは認められないこと」であることから、使用人としての地位に基づいて支給される現物給与にはあたらず、当選者の一時所得として取り扱うこととなると推察 します。
ちなみにこの忘年会が成績優秀者のみなど出席者が限定されていた場合は、給与とみなされる可能性も生じてきますので注意が必要です。
成績優秀者を対象として行う海外旅行に係る経済的利益
≪照会要旨≫
創立100周年記念行事の一環として営業成績が顕著な従業員を抽選で次のような海外旅行に招待することとしていますが、これにより従業員が受ける経済的利益はどのように取り扱われますか。
1 対象者 20人
成績優秀者(約2,000人が該当)を対象として抽選を行い、これに当選した者
2 費用 約30万円(4泊5日の海外旅行)≪解答要旨≫
給与所得に該当します。(国税庁 質疑応答事例「成績優秀者を対象として行う海外旅行に係る経済的利益」より抜粋)
旅行に招待する者の選定を抽選という方法で行うことからすると、その旅行に招待されるか否かは偶発的なものとも考えられますが、その旅行の抽選対象者である成績優秀者は所定の業績を挙げた者に限られており、その旅行に招待する者の抽選方法が偶発性を有しているとしても、これにより受ける経済的利益は勤務の対価としての性質を有しているものと認められます。
戻りまして、一時所得とは、労務の対価としての性質を有しない所得をいいます。他の事例でいえば懸賞や福引の賞金品(業務に関して受けるものを除く)のような所得をいいます。
また、一時所得の金額は、総収入金額から収入を得るために支出した金額を控除し、最高50万円の特別控除額を差し引いて計算します。そして、特別控除額を超えた場合、その金額の1/2に相当する金額を給与所得等の他の所得金額と合算して総所得金額を求め、税額を計算することとなります。
以上のことから、一時所得に該当し、金額が50万円以内ならば、課税の必要はないと考えます。※
※法人側は社会通念上の範囲であれば「厚生費」としての取り扱いが考えられます。
また、商品を金券などで支給する場合、換金性が高いことから、給与としての課税が生じる可能性がありますので注意が必要です。
まとめ
一般的な忘年会においては、出席者は従業員が対象です。その場合は、給与所得という指摘をされる懸念もあるかと思います。
ですが、ビンゴの景品は従業員が働いたことへの報酬ではありません。また、ビンゴ大会には従業員全員が出席していたとしても、全員に景品が用意されていることのほうが稀です。当たった賞品については、偶発的な要因により得た所得であると考えます。
そのため、受け取る経済的利益の所得区分は一時所得であり、金額が50万円未満であれば源泉徴収を行う必要がないと思われます。
なお、本稿は執筆現在の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈・適用に当たってはケースにより見解が分かれる場合も考えられます。また、金額の多寡により指摘される可能性もありますので 、高額な賞品を検討されている場合は是非北島会計にご相談いただければ幸いです。