役員貸付金について

役員貸付金とは

役員貸付金とはその名の通り、「会社」が「役員」にお金を貸し付けている状態をいいます。
この役員貸付金にまつわる税務問題の第一は、利息計上が必要だということです。

役員からの借入金には利息計上が通常要求されないのに対して、会社から役員への貸付には利息計上が必須とされています。
これは、税法が想定する「人」の位置づけが異なることに起因しています。

すなわち、株式会社は営利を目的とした「人」なので当然に利益にならない行為はするはずがない。これに対して、個人は営利追及を第一義的な目的として存在しているわけではないので、経済的に合理的な行動をしないことも十分ありえる、と考えられているからです。

そのため、会社が役員を含む第三者に貸付を行うときは、必ず利子を付して処理しなければならないこととされているのです。

金利はどれぐらい必要なのか

では、利息を付けなければならないとして、金利はいったい何パーセントに設定すれば良いのでしょうか

これについては、国税庁の公表するタックスアンサーに以下のものがあり、法人税法の処理でもこの内容に準拠した処理をしていれば問題になりません。

役員または使用人に金銭を貸し付けた場合、その利息相当額は、次に掲げる利率によります。

(1)会社が他から借り入れて貸し付けた場合:その借入金の利率
(2)その他の場合:貸付けを行った日の属する年に応じた次に掲げる利率
・平成22年から25年中に貸付けを行ったもの:4.3パーセント
・平成26年中に貸付けを行ったもの:1.9パーセント
・平成27年から28年中に貸付けを行ったもの:1.8パーセント
・平成29年中に貸付けを行ったもの:1.7パーセント
・平成30年から令和2年中に貸付けを行ったもの:1.6パーセント
・令和3年中に貸付けを行ったもの:1.0パーセント
・令和4年から令和5年中に貸付けを行ったもの:0.9パーセント

(国税庁タックスアンサー「No.2606 金銭を貸し付けたとき」より一部抜粋)

なお、令和6年中に貸し付けを行ったものについても、利率は0.9パーセントになります。

  • 参照条文等:「所得税基本通達36-49」 
         「租税特別措置法第93条第2項
         「財務省告示第289号」

要するに、以下の利率で認定利息の計上をすることになります。
・会社が他から借り入れて貸し付けた場合は、その借入金の利率
・それ以外は必ず0.9%以上の利率

もし役員に対して無利息または低い利息で金銭を貸し付けた場合には、次の「金銭を無利息または低い利息で貸し付けたとき」の場合を除き、上記の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が給与課税となります。

金銭を無利息または低い利息で貸し付けたとき
(1) 災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった役員または使用人に、その資金に充てるため、合理的と認められる金額や返済期間で金銭を貸し付ける場合
(2) 会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、この利率によって役員または使用人に対して金銭を貸し付ける場合
(3) 上記(1)および(2)以外の貸付金の場合で、「役員または使用人に貸し付けた金銭の利息について」の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が1年間で5,000円以下である場合

(国税庁タックスアンサー「No.2606 金銭を貸し付けたとき」より一部抜粋)

また、長期的に役員貸付金の返済がない場合、税務調査にて当該貸し付けが「個人的に消費」したものとして「役員賞与」と認定される場合があります。

役員賞与は損金に算入できず、認定された場合は、源泉徴収が必要になるため「不納付加算税」が課税されます。また、個人的な消費として認定される場合は、重加算の対象となる可能性もあります。

役員報酬認定をされないためにも、「金銭貸借契約書」や「返済予定表」など、借入事実や返済意思を示す根拠資料を整備しておくことが重要です。

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